1.圧縮機により毎分[150kg]の空気を圧縮している。圧縮機の出口で比エンタルピーが100[kJ/kg]だけ増加し、圧縮機から外部への放熱量が空気1[kg]あたり12[kJ]であるとき、この圧縮機を駆動するに必要な動力は何[kW]か。
流れ系に対するエネルギーバランスの式を適用する。
$\dot{m}(h_{1}+ \frac{w_1^2}{2})+\dot{Q} =\dot{m}(h_{2}+ \frac{w_2^2}{2})+\dot{W} $
圧縮機の入口と出口における速度エネルギーの変化は、
比エンタルピーの増加に比べて小さいと仮定すれば、必要な動力は次のようになる。
$\dot{W} = \dot{m}(h_{1} -h_{2}) + \dot{Q}$
$= \frac{150}{60}×(-100×10^{3})+\frac{150}{60}×(-10×10^{3})$
$=-275×10^{3}[W] = -275 [kW]$
仕事の値が-(マイナス)になるのは、仕事を外から加えることを示している。
エネルギーバランスの式に代入するときにも、熱や仕事の方向を考慮する必要がある。
(放熱であるため$\dot{Q}$は-になる)
2.内容積4[m3]の変形しない容器に、圧力900[kPa]、温度320[K]のアルゴン(分子量40)が入っている。このアルゴンに容積一定で1000[kJ]の熱を加えた。アルゴンを理想気体として、比熱比k=1.667、一般ガス定数R=8.315[kJ/(kmol・K)]とするとき、以下の質問に答えよ。
(1)充てんされているアルゴンの質量を求めよ。
(2)熱を加えたときのアルゴンの圧力、温度を求めよ。
(3)熱を加えたことによるアルゴンのエンタルピ変化を求めよ。
【解答】
(1)理想気体の状態式により計算する。アルゴンのガス定数は一般ガスの定数$R_0$と分子量Mから計算できる。
$m=\frac{PV}{RT}=\frac{PV}{\frac{Ro}{M}T}$
$ =\frac{900×10^{3}×4}{\frac{8.315×10^{3}}{40}×320}=54.1[kg]$
(2)等容変化であるため
$Q_{12}=mc_{v}(T_{1}-T_{2})$
となることから、加熱後の温度が計算できる。ここで、定容比熱$c_{v}$は比熱比とガスの定数から計算する。
$c_{v}= \frac{1}{k-1} R=\frac{1}{k-1} \frac{R_{0}}{M}$
$= \frac{1}{1.667-1} \frac{3.315×10^{3}}{40} =312[J/kg・K]$
これにより加熱後の温度は次のようになる。
$T_{2}= \frac{Q_{12}}{mc_{v}} +T_{1}$
$ =\frac{1000×10^{3}}{54.1×312}+320=59.2+320=379 [K](=106℃)$
また、圧力と温度は比例するため、加熱後の圧力は次のように計算できる。
$P_{2}=P_{1} \frac{T_{2}}{T_{2}}$
$=900×10^3×\frac{379}{320}=1.06×10^6[Pa]=1.06[MPa]$
(3)アルゴンの定圧比熱は、
$c_{p}=kc_v$
$=1.667×312=520[J/kg・K]$
となるため、エンタルピーの変化は次のようになる。
$H_2-H_1=mc_p(T_2-T_1)$
$=54.1×520×(379-320)=1.67×10^6[J]=1.67[MJ]$
